子宮が正常かどうかを判断するには、まずどの角度から見るかをそろえておく必要があります。子宮は、おおまかに言えば2枚の平たい筋肉の板(子宮筋層)が前後に重なり合ったもので、その間に子宮内膜で覆われた子宮腔があります。
生殖年齢の女性では、正常な子宮の長さは約7 cmです。子宮体部が約4–5 cm、子宮頸部が約2–3 cmで、体部と頸部の比は2 : 1です。子宮はミュラー管から発生し、ミュラー管が子宮頸部、子宮体部、卵管を形成します。
最後に、中央冠状断面(前後方向に見た断面)では、正常な子宮腔は逆三角形をしており、その三辺を囲む筋層の厚さはほぼ同じです。
子宮形態異常はT字型子宮とも呼ばれ、子宮の筋肉の発生異常によって起こる先天的な異常です。筋層が厚すぎるために子宮腔が狭く押しつぶされ、アルファベットのTのような形になります。
子宮腔は幅の広い逆三角形。筋層の厚さはどの辺でも均一です。
厚い側壁が子宮腔を狭い「T」字形に押しつぶしています。外側の形は同じでも、内側はまったく異なります。
子宮形態異常は、子宮内膜への血流の減少、子宮の血流と収縮の異常、子宮内膜の受容能の低下、胚の着床障害、そして妊娠中の子宮の拡張不良と関連しています。
妊娠を希望していない女性の場合、子宮形態異常があっても診断されないままのことがあります。検査のきっかけとなるような婦人科的な問題をほかに起こすことがほとんどないためです。しかし、着床と妊娠に関しては、子宮形態異常は着床の可能性を下げ、成長する赤ちゃんを収めるために子宮が伸びることを難しくします。次のいずれかに当てはまる場合は、専門医の評価を受けてください。
子宮形態異常を診断する方法はいくつかあります。それぞれ感度が異なり、検査する人の経験に左右されるものもあります。
| 方法 | わかること | この診断における精度 |
|---|---|---|
| 3D経腟超音波検査(3D-TVUS) | 中央冠状断面、子宮の外形と内腔 | 高い |
| 2D経腟超音波検査(2D-TVUS) | 矢状断面(横からの断面)のみ。冠状断面での角度の計測はできない | 不十分 |
| 子宮卵管造影検査(HSG) | 内腔のみ。外形はわからない | 低い |
どの検査方法でも、次のものを確実に描出できる必要があります。
腟と子宮頸部を通してカメラを子宮腔に入れるため、手術の切開はありません。医療用画像技術の進歩により、診断用の子宮鏡は直径わずか3–4 mmになりました。さらにバジノスコピー法では腟鏡も子宮腟部鉗子も使わないため、患者さんの痛みが少なく、より快適です。
正常な子宮では、子宮腔が広く、子宮内膜はピンク色で、左右両方の卵管口が見えます。子宮形態異常では、子宮腔がトンネルのように狭く奥へ続き、子宮内膜は白っぽく、卵管口は見えません。
子宮鏡で見た子宮腔のパノラマ像
子宮腔は広く、子宮内膜はピンク色で、左右両方の卵管口が見えます(矢印)。
トンネルのように狭い子宮腔で、子宮内膜は白っぽく、卵管口は見えません。
説明のためのイラストであり、実際の患者さんの写真ではありません。
動画:子宮形態異常と正常な子宮の子宮鏡像の比較(タイ語)
動画:バジノスコピー「ノータッチ」法による診断的子宮鏡
子宮を明瞭な中央冠状断面に合わせて表示できるため、外形と内腔の両方を高い精度で評価できます。費用が手ごろで、結果がすぐにわかり、検査する人の経験への依存も比較的少ない方法ですが、超音波検査の追加のトレーニングは必要です。子宮形態異常は、子宮が1つ、子宮腔も1つで、側壁が厚くなり子宮腔がアルファベットのT字形になっている像として描出されます。
3D経腟超音波検査(3D-TVUS)の中央冠状断面での見え方
子宮は1つで、子宮腔も1つ。子宮腔は三角形です。
子宮は1つで、子宮腔も1つ。厚くなった側壁が子宮腔をT字形に押しつぶしています。
説明のためのイラストであり、実際の患者さんの写真ではありません。
矢状断面(横からの断面)しか得られないため、診断にはあまり適していません。検査する人に高度な技術が必要で、想像に頼らざるを得ず、冠状断面での角度も計測できないため、精度は不十分です。
卵管の検査に使うのと同じ検査です。子宮腔の内部はわかりますが外形はわからないため、精度は低くなります。
現在のところ、子宮形態異常に対して広く受け入れられた治療プロトコルはなく、治療成績を比較した研究(ランダム化比較試験)もありません。それでも、妊娠を希望する子宮形態異常の女性は、子宮鏡によって正常な子宮腔を取り戻す手術(子宮鏡下子宮形成術)を受けるべきだという点で、世界の専門家の意見は一致しています。どの研究も同じ方向を示しており、手術後には妊娠の結果が改善し、流産が減少しています。
子宮鏡下子宮形成術は、子宮の壁がまだ薄く、子宮が器具に対して収縮しない卵胞期初期(排卵前)に行うことができます。原則として、左右の子宮筋層を直線状に切開し、峡部から見上げて卵管の開口部(卵管口)が見えるまで、その線に沿って少しずつ切開を深くしていきます。子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫など子宮腔内にほかの病変がない限り、子宮の組織を切除することはありません。
動画:子宮形態異常に対する子宮鏡下子宮形成術(タイ語)
スコープを子宮頸部から子宮腔へ入れるため腹部に傷がなく、ほとんどの患者さんは手術後ほぼ普段どおりの生活に戻れます。特に最初の1週間は、少量の性器出血がみられることがあります。
子宮腔の感染のリスクがあるため、手術後1か月間、または次の月経が来るまでは性交を控えることをお勧めします。
子宮腔内の瘢痕(癒着)は、次の方法で予防できます。癒着がきわめて起こりにくい左右の側壁に切開を置くこと、手術直後に子宮腔内に癒着防止ジェルを入れること、高用量のエストロゲンを投与して手術部位を子宮内膜が覆うよう促すこと、そして感染予防のために抗生物質を投与することです。
手術後は、診断的子宮鏡または3D-TVUSで子宮腔を再評価し、形が正常に戻ったかどうかを確認します。
バジノスコピー法による診断的子宮鏡は外来で行え、時間も短く、痛みはほとんどないか、まったくありません。
同じ子宮形態異常の患者さんの診断的子宮鏡像
子宮内膜は白っぽく、子宮腔は狭く深く、卵管口は見えません。
正常な広さの子宮腔、血流の良い子宮内膜、左右両方の卵管口が見えます(矢印)。
説明のためのイラストであり、実際の患者さんの写真ではありません。
経過観察の評価が終われば、すぐに自然妊娠を試みることも、体外受精のための卵巣刺激を始めることもできます。
凍結融解胚移植を予定している場合は、移植のための子宮内膜の準備を始める前に、少なくとも2回の月経周期を待つことをお勧めします。
当院のデジタル子宮鏡クリニックの手技により、子宮鏡手術はより安全、正確、便利になり、胚を迎えられるよう子宮腔を回復させることができます。当院ではこれまでに100人近くの患者さんが手術を受けており、私は子宮形態異常の患者さんの手術後の妊娠の結果をまとめました。
自然妊娠でも体外受精でも、合計で約5か月。LIFE by Dr. Patで手術を受けた100人近くの患者さんのデータです。
動画:子宮形態異常は不妊だけの問題ではない(タイ語)
Dr. Patsama Vichinsartvichai, MD, MClinEmbryol, EFOG-EBCOG, EFRM-ESHRE/EBCOG, FACOGは、生殖内分泌・不妊症の認定専門医です。Navamindradhiraj大学Vajira病院IVFユニットの元責任者で、バンコクのLIFE by Dr. Patの創設者です。形態異常(T字型)子宮と子宮因子による不妊症を中心に研究を発表しています。
Patsama医師のプロフィール →